瀬尾雅弘『フレンチポップス・シックスティーンズ イェ・イェと称されるムーブメントをめぐって』

 ここ1年ほど、他人が書いた詩に対する自分の感想を書くこと、詩による表現を読み解くこと又は感じたことを言葉にすることに興味を失っているのですが(こういうことを書いている時点で、また書けるのではないかと考えている自分がいます。)、詩に限らずに、自分の感じたことを、ある程度のまとまりのある文章を書き留めておきたいという意欲は失っていませんでした。  そこで、最近、少し考えさせられる音楽に関する本に出逢ったので、感じたことを書きたいと思います。  一つは『ザ・ビートルズ史(上下)』(マーク・ルイソン著、山川真理・吉野由樹・松田よう子訳、2016年11月20日河出書房新社刊)です。もう一つは『フレンチポップス・シックスティーンズ イェ・イェと称されるムーブメントをめぐって』(瀬尾雅弘著、2017年2月20日彩流社刊)です。  『ザ・ビートルズ史(上下)』については、かなり話題になっていた本なので、読まれた方も多いかと思います。私は、これまでビートルズに特別に興味を持つことはありませんでした。解散前のビートルズについては、その存在をテレビのコマーシャルに映る映像とともに、僅かに時代を共有していますが、当時小学入学前だった自分にとって、微かに記憶している程度です。その後も、音楽への興味は人並みに持ちましたが、ビートルズの音楽は、他のミュージシャン、例えばシルビー・バルタンとかミッシェル・プルナレフなどの、自分にとってみれば時の流れと共に色褪せてゆく流行の一つに過ぎませんでした。ただし…

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