駒村吉重『命はフカにくれてやる 田畑あきら子のしろい絵』(2024年、岩波書店)について
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彼岸を疾走しつづける少年の燃える髪の輝きを浴びて、河辺で一人の少女が身体に
巻いた白く長い包帯を解いている。秘仏か木乃伊のように。白い無数の下着のうちで
激しく回転する肉体がみえる、あたりはそのため霧を生じ、私は頬に冷たい掌の感触
をうける。
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行け! 行け!
行け! 行け!
行け! 行け!
響く叫び、響く光景全体は
おお 球状の言葉だ!
私は人間の姿をしていない、言葉だ!
行け! 行け!
おお 壮大に腐ってゆく
純白文字が撥する虚無音を聞いた
紙幣が薄紅色だ!
ラッセル
雪
行け!
ときおり私は青いガラスの破片をひろって額の中心に飾った
ああ 世界中と平行移動
私の歩行の時間構造が私の魂の実体だろうか
行け!
銀河破壊!
吉増剛造『黄金詩篇』より
詩「夏の一日、朝から書き始めて」第四連及び第五連
この本、駒村吉重『命はフカにくれてやる 田畑あきら子のしろい絵』(2024年、岩波書店)を最初に読み終えて、二つのことが私の頭を掠めました。一つは、田畑あきら子のカタカナ混じりの言葉が、あまりにも!吉増剛造の詩の言葉の運びを彷彿させるということです。もちろ…