岩下祥子詩集『うさぎ飼い』

 岩下祥子詩集『うさぎ飼い』(発行:2020年11月30日、発行所:石風社)は、彫刻のような詩集です。それもブロンズのゴツゴツした肌触りのある、手のひらに載りそうで、それでいて全体像が見えない。どのように認識すれば良いのか分からない言葉達です。でもしっかりと形は見えるのですから厄介なのです。  私の理解はこうです。気兼ねなく大きく広げられた紙があり、そこにはたくさんの言葉が書かれているのですが、玄関の間口が狭く、その大きな紙は二つ折りに畳まなければ取り出すことができない。そこで問題となるのが、<私>はその紙に何が書かれているのかわからず、狭い入口から手を出すこともできず、どうやって二つに広げられた大きな紙を畳んで取り出してよいのかわからないもどかしい状況なのです。  もっと具体的に書くと、折り畳まれた短歌を寄せ集めたような詩です。短歌は音韻と言い換えてもよいです。例えば    ちがわない人と受話器越しに喋っていた    い。その唇はこの声の何秒前に発音して    いるんだろう。天井から見てみたい。部    屋は予想通り片付いているだろう。予告    しなくちゃ。火曜日の夜、上から覗きま 
   す。私が見たくないものは隠してください。                   注:最終行は句読点半角処理                詩「たまくらに」第1節  この詩片をひらがなだけで以下の表記させていただきます。    ちがわないひ…

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