前沢ひとみ詩集『約束。』

 約束という言葉を改めて考えてみました。すると、私ももういい加減な歳になり、ここしばらく約束をしたことが無いことに気づきました。果たして私は結婚式以降、いつ約束をしたのだろうか、約束などをしたこと無かったのではないだろうかという結論に達しようとした寸前で、様々なことを約束した、させられた、したつもりでいたことに気づいたのです。誰とどんな約束をしたのかは、あまり今の自分とは関係のないことなので、ついここしばらくは約束などしたことが無いと思ってしまったのでした。こんなことを書いていると身勝手なことを書いているとお叱りをうけそうですが・・・。  前沢ひとみ詩集『約束。』(2019年11月20日、株式会社あきは書館発行)は、彼女の第2詩集です。彼女は私にとって、互いに20代で、ある文芸誌の同人として知り合い、それから約40年後の今でもその縁が続いている数少ない詩の書き手です。その上、私と中村が同人として続けている詩誌『回生』に多くの作品を寄稿していただいておりました。こんな昔からのことを書きたくなったのは、そんな長く彼女の詩を読んできていて、彼女の詩について合点がいったことが、これまで一度もなかったことを言いたいがためです。前作の詩集で寄せ書きをさせていただいたのですが、その文章の中で私は彼女の詩を「物理」と表現しました。それは、詩の中に形のある物質が存在し、近づくと跳ね返してくるものがある、だから物質があるというようなことを書いただけで、彼女の詩を自分なりに理解していたかと言えば、全く理解…

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