竹内英典詩集『歩くひとの声』
竹内英典氏の送られてきた詩集『歩くひとの声』(発行所:澪標(みおつくし)、2017年8月15日発行)を読み出したとき、それが竹内氏の2冊目の詩集ということに驚いた。それは、たった一冊しか、これまで詩集は出していなかったのかということに対する驚きだった。確かに、私の中では竹内英典氏の詩の印象は、詩集『死者たちのとき』に書かれている言葉から、先には進んでいない。いただいた貴重な限定本詩画集『影』にしても、第一詩集『死者たちのとき』の一卵性の双子ようなものとして読んでいる。それは、あまりにも詩「(影)」の印象が強いからかもしれない。
多分、私が最初に竹内英典氏の詩を記憶にとどめたのは、詩誌『ひびき』に掲載された作品「(影)」(詩誌「ひびき」掲載は1980年8月、第58号)であった。それから、第一詩集『死者たちのとき』(発行所:永井企画出版、1974年6月20日発行)を買い求めたのではないだろうか。だから、竹内氏の詩人としての行為については、同時代をいくばかりか重ねて生きているとはいえ、正しい時間に沿って認識してきたのではなかった。
そこで、第二詩集が送られてきた。正直、戸惑った。あれ以上の強烈な印象を残す表現が、果たしてこの詩集の中にあるのだろうか、と。理由は、その後、丁寧に毎回送られてくる仙台演劇通信誌『ACT』や詩誌『ひびき』で竹内氏の詩をときおり読んでいたが、詩「(影)」以上の印象を持つ詩がなかったからである。さらには、倉橋健一氏の詩集の帯文に「思想詩集」という言葉が書か…